Residency
in Korea
Report
韓国滞在制作レポート
25.04.14~25.04.28
約2週間、共同制作作品「1200」の前半クリエーションとして日本の振付家のかとうりなが、韓国の振付家チョン・ジェウの拠点である韓国・仁川に滞在し、制作を実施しました。
制作の拠点は仁川空港から電車で約10分の地域「雲西(ウンソ)」

拠点となった雲西(ウンソ)のまち

到着初日は極寒。夕食は温かい「プデチゲ」を共に
「雲西(ウンソ)」は仁川空港ターミナルから直通の列車「AREX」で1~2駅の地域。島になっており、海が近いのでいつも風が強く都心のソウルより少し冷涼。ソウル中心地までは電車で2時間ほどかかりますが、空港からは近いので海外からの観光客の宿泊利用も多いため、宿泊施設の充実や、飲食店や特にお洒落なカフェが多くなっており、何故かあとはカジノが多いんだとか。笑
チョンは小さな町だと話していましたが、日本で暮らすかとうの体感的に駅前のエリアは「高田馬場」や「大宮」ぐらいの駅の栄え具合?笑に感じました。
仁川の中で雲西は新しい町であり、比較的治安もいいんだとか。
到着初日、チョンがかとうを空港まで迎えに来てくれ、初日の夕食を現地の温かい料理でもてなしてくれました。
滞在時のスケジュールや構想を練りつつ制作の話や、たわいもない日常的な話題など、交流を深めながら夕食を終え、スタジオを回るなどして初日を終えました。
いよいよクリエーションへ

クリエーション初期、まずは案を口頭で話し合うようす

コミュニケーションは主に英語で。創作ノートより
滞在2日目から早速ノンストップで約2週間の入りました。初期はまず互いのコンセプトの擦り合わせやアイディア出しをジャスチャーや時には翻訳機を用いながら…言葉にして行いました。
互いに母語でない英語でのやりとりにはじめはなかなか慣れず、イメージを伝えるのにも一苦労でしたが、「ダンス」という共通言語で、以外にも言葉で100%伝えられなくても相手に言いたいことが伝わる瞬間が多々。笑
むしろその「言葉では伝えられないけれど、言葉で無いものでしか共有できないもの」をヒントに、前半のクリエーションの日々をいろんな実験や模索を繰り返しながら重ねていきました。

「距離」というテーマから「メジャー」を使ったリサーチへ

時には一緒に現地の100均へ出向き、工作も笑
制作の合間には観光地訪問やオープンクラスの受講も

新村(シンチョン)駅徒歩10分のオープンスタジオ「SEOUL TANZ STATION」

観光地「東大門(トンデムン)」。大きなファッションビルや問屋市場が有名
制作の合間にはかとう個人で、現地の人々や景色のリサーチのために観光地を、また当初の目的である「韓国のダンスシーン」をリサーチすべく現地のダンスオープンスタジオにも数回訪れ、受講してきました。
リハーサルの開始までに余裕のあった日で劇場が多くあり、演劇やダンスがさかんだという「恵化(ヘファ)」~アーティステックな壁画が並ぶ「梨花洞(イファドン)」や、ショッピングスポットで有名な「明洞(ミョンドン)」などを巡りました。
また、チョンが5~6年前に講師をしていたというオープンスタジオの「SEOUL TANZ STATION」を教えてもらい、現地のダンスレッスンを受けてきました。
互いのダンスシーンのはなし
オープンクラスを受けた日や、興味本位でクリエーションの前後や合間でチョンと互いのダンスシーンの話をちらほらしました。
まず、「総称」や「区分」的なもので韓国にも日本とほぼ同じように「Jazz」「Modern」「Contemporary」の区分があり、レッスンやトレーニングの内容もほぼ同一のもので、チョンとその点に関しての違いは互いの国でどうあるかというトピックで話しましたが、チョン曰く、「Jazzは少し違った音楽を使って踊る感じで若干毛色が違う感じがするが、ModernとContemporaryはほぼ同一」らしく、また、「Modernのほうが師弟関係の感じが強い感じがして(「先生」と呼ぶなど)、Contemporaryのほうがフラットな感じで、畑は違う」とも話しており、日本のかとうもこの点は共感しました。
大きく違うと感じたのが「兵役」の存在。男性は韓国では通常2年間の兵役の義務があり、どの専攻の大学に行っても基本的には大学2~3年の間に兵役に行って一度休学し、兵役が終わったらまた復学するのが一般的みたいで、そのため大学生たちにかなり年の差がありました。
さらに、他の芸術やスポーツでもあると思いますが、「ダンス」でも、「伝統舞踊」「バレエ」「コンテンポラリーダンス」の3部門のみですが、政府指定のコンペティションで1位の成績を残せば、兵役が免除されるらしいのです!そのため、韓国男性のダンサーのモチベーションは「兵役に行きたくないこと」が強くあるらしく、コンペティションへの熱意を加速させるのだとか。笑
チョンは無事に政府指定のコンペ(しかも彼の世代は海外のコンペが指定だったらしいです、今は国内みたいですが)で1位を獲り、兵役を免れたとのことです。
「それでは女子はどうなのか?」とかとうが尋ねたところ、「女子も兵役はないがコンペへの熱意が強い傾向は同じで、韓国はとにかくコンペティションが好きな国だから、多くのダンスをする子達には常にそれが根本にある笑」と言っていた。そのため韓国のレッスンや先生は、かとうが直近で日本で受けてきたものよりも、かなり熱血めでハードな印象だったような…

他には、韓国ではダンスの専攻の大学を卒業したあとでも、リハーサルなどで大学の施設を気軽に使えること(日本でも大学によると思いますが…)や、今はいろんなスタイルがルーツのダンサーがいるが、基本モダンダンスのテクニックは「グラハムテクニック」や「リモンテクニック」の基礎を重んじるのが多いこと(日本では師弟関係が強く先生によるかとは思いますが、その先生独自のテクニックや踊り方そのものを模範することが多い印象、その先生がグラハムを通っていても「グラハムテクニック」とは言わないニュアンス)などなど…
特に大学の施設が日本では一般に、卒業した後では使えないことには「なんで!?」と驚いていましたね。
時にはチョンのスタジオの教え子と一緒にクラスを受けたり、話したりする機会もあったので、互いの国のダンス専攻の大学事情の話もして、「振付法」を教える大学はほぼないそうで、基本的に韓国の大学は「テクニックの高いダンサーを輩出すること」に重きを置いている大学が多いそうで、作品の作り方は自分たちで編み出して学んでいくそう。
卒業後、日本では一般企業に就職する学生も多くいることを伝えたが、韓国ではそれよりも、ピラティスやヨガ、またはダンス講師になる学生が多いそう。
作品の大枠を完成させ、日本へ


いよいよ作品もムーブメントを固めていく段階へ
滞在制作も残り1週間に差し掛かってきたころ、いよいよ作品の全てのパートをざっくり繋げる工程に入り、流れを確認していきました。
単体でやっていた時には違和感なくやっていた動きや構成も、いざ前の場面から繋げてみると互いや、あるいは片方が違和感やぎこちなさを感じることも少なくなく、その際はどこがどのような理由でそう思わせたか、代替の案などを出し合い、互いが納得できる最善策を探していきました。
その頃にはクリエーションを始めた当初よりもかなり意思疎通がスムーズにできるようになっており、気づいたら翻訳機の登場回数も減っていました。笑
修正をギリギリまで重ねながら、最終日にようやく納得した形の通しを終え、前半の韓国でのクリエーションを終えました。
残すところは日本滞在制作での2週間!作品の完成をどうぞお楽しみに!
是非私たちの集大成を生でご覧ください。